2020/06/14

「至福の時」

退院した日はとても具合が悪かった父ですが、
翌日朝早くから様子を見に行くと、
ニコニコ笑っていました。
この日はとても体調が良くて、
母が心配だったので、母のために昼食を準備している時のこと。
イカを2杯と、特大サイズの鮭の味噌漬けを1切れ等焼いていると、
家中にイカの匂いがしておりました。
「いい匂いがするなぁ」と父が言うので、
「食べる?」と聞くと、
「食べる」と父。
私と父の話し合いで、絶対ごくんと飲み込まないことを約束できれば、
全部くちゃくちゃ噛んで固形物は吐き出さなくてはならないけどできるか?
と聞くと、「できる!」
と言うので、一口大のサイズに切ったイカを食べさせてあげました。

幸せそうにずっと噛んでいる…。
もう1ヵ月近くも口に物を入れていないので
本当に幸せそう。


飲み込まずにゴミ袋に出しての繰り返しで、
ついにイカ1杯を1時間30分かけて食べることができました!
といっても、本当に食べてるわけではなく噛んでいるだけで、
すべてはおいしいエキスだけ味わったら吐き出さなくてはならないのですが、

「あー、至福の時だ」


と何度も幸せそうにイカを口に含んでいました。

最後のデザートは国内産のさくらんぼ3つ。

こちらも
「あーおいしいなぁ」
と、目をつぶって幸せそうに微笑みました。

飲み込むと全部詰まって吐いてしまうので、
たかがそれだけで息もできなくなり救急車ですから、
リスクはありましたが、父の喜ぶ顔見て、
私も嬉しさのあまり涙がこみ上げてきました。

翌日はとても体調が悪く、
ずっと一日中寝ているだけ。

イカをこんなに嬉しそうに食べる父を見ることができて、
これは奇跡なんだなぁと思いました。

父よ、もう少し頑張ろう。

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